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国際自閉症学会(INSAR)での発表の紹介

2024.05.30

2024年5月15日~5月18日にメルボルン(オーストラリア)で開催された国際自閉症学会(INSAR)にて、AMPチームが自閉スペクトラム症者とマイクロアグレッションについての研究を2件発表いたしましたので紹介いたします。

※マイクロアグレッションは、自分とは異なる人へに対する無意識の偏見や差別、そして無理解(もしくは間違った知識)が態度や言動として現れ、意図的、または意図的でなくとも周囲の人を傷つけてしまうことをいいます。


「自閉スペクトラム症者が経験するマイクロアグレッション」

この研究では、自閉スペクトラム症者(以下、AS者)が受けるマイクロアグレッション、そういった行動に対する認識、そしてマイクロアグレッションを生み出す社会構造について検討しました。

まず、今回の研究参加者(AS者)が経験するマイクロアグレッションでは主に4つにわけることができます。

  • Maximization(誇大化)…サヴァン症候群のように非常に高い能力を持っていると過度に期待される
  • Minimization(過小化)…赤ちゃんのようになにもできない人として扱われる
  • Symbol of dehumanization(社会性の否定的表現)…他者が対人関係が苦手な人を指して、「自閉症みたい」などのAS者の人間性を否定する言葉が使われる場面に遭遇する。
  • Invalidation(無効化)…日々困難(特に目に見えない感覚の特異性等)に感じていることを無視される

AS者は他の障害者と比較して、MaximizationとMinimizationに大きな隔たりがあることが明らかとなりました。また、日常生活の様々な場面で「自閉症的みたいに」などの言葉が対人関係の不得手を表現する際によく使用されていることも着目すべきポイントです。

そして、参加者の中には、専門家からマイクロアグレッションを受けたという経験があるという回答もあり、今後のAS者と専門家の間に生じるコミュニケーションの障壁に目を向けながら介入や研究をする必要性があります。


「障害者が受けるマイクロアグレッション体験と孤独感:自閉スペクトラム症受容の役割」

自閉スペクトラム症者(以下、AS者)が周囲からマイクロアグレッションを体験することが多いことが明らかとなっており、この研究ではAS者が日々受けるマイクロアグレッションの体験が、自閉スペクトラム症としての自分を受け入れる自己受容と孤独感に与える影響について調べました。

自閉スペクトラム症の受容(Autism Acceptance)は、2つの種類があります。

①「外的受容」

これは周囲の人から受容されているかを示し、例えば、周囲の人からスティグマ(偏見)を感じることで、AS者が周りから受け入れてもらえていないと感じるとされています。

②「内的受容」

これは自分自身に対する受容のことをいいます。例えば、周囲からのスティグマ(偏見)が内在化すると自己受容は減少し、セルフスティグマ、つまり自分自身へのスティグマを持つことにつながります。

自閉スペクトラム症に対する外的受容または自己受容が自閉スペクトラム症者のマイクロアグレッションの体験と孤独感の関係に与える影響について検討したところ、内的受容よりも外的受容がマイクロアグレッションの体験と孤独感に影響していることが明らかとなりました。つまり、AS者のマイクロアグレッションの体験からくる孤独感を軽減させるためには、AS者自身に対しての個人的アプローチよりも外的受容、つまり社会的に受容していくことに着目していくことが今後必要になっていきます。


今後もAMPチームでは、社会に根づく無意識の差別(マイクロアグレッション)が、発達障害を始めとするマイノリティの人の考えや精神的な健康に、どのような作用をもたらすかを様々な研究や活動を通して明らかにしていきます。

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